マカオ研修旅行記 カジノ編(4)
 マカオで行われているゲームの紹介も、いよいよ今回でラストです。
 当初は1ページで簡潔にまとめようと思っていましたが、色々書き加えているうちにボリュームがこんなに増えてしまいました(汗)
 ようやく辿り着いた最終回は、マカオならではの妖しくも魅力的な種目を語ります。

《スリーカードバカラ:三公百家樂、または富貴三公》
 テーブル数:少ない
 最低投注額:中級カジノ・・・HKD100〜、高級カジノ・・・HKD200〜

 マカオのカジノだけで行われている変則バカラ。
 参加者全員とディーラーに3枚のカードを配り、その合計点数の下一桁がディーラーよりも大きければ勝ちとなります。
 端的に言うと「カード3枚で行うカジノウォーのバカラ版」と言った所でしょうか・・・(意味が伝わりますかね?)

 ディーラーはゲーム上、特に有利なルールが適用されていないため、プレイヤーが勝利した時に賞金の5%を手数料として差し引かれます。

 カードの点数は "A" が1点、"2〜9" は数字通り、"10と絵札" は0点として数えます。
 ちなみに、このゲームの最大の特徴は「同点時の決着ルール」にあります。

 同点になった時は、手札に絵札(10ではダメ)が何枚あるかを数え、その枚数が多いほうが勝ちになるのです。
 例えば、同じ9点でも "4,5,K" と "9,J,Q" は絵札が2枚組み込まれている後者の勝利となります。

 そう考えると、最強の手札は「9と絵札二枚」の組み合わせになるはずですが、それよりも強い組み合わせが一つだけあります。
 何と「絵札三枚」がこのゲームにおける最強役なのです。

 この状態を「三公:サムゴン(絵札3枚の意味)」と呼び、本来は最弱の0点であるはずが、全てに勝る大逆転役となります。

 技術介入の余地が全く無く、大陸系お得意の○×ゲーム形式であるため、台数は多くなくても、そこそこの人気を保っているようです。

 また、この三公百家樂を発展させた「富貴三公」というゲームも存在します。
 このゲームは現地で何故か「THREE CARD POKER」と表記されますが、本場のスリーカード・ポーカーとは全く別物です。

 富貴三公の最大の特徴は、参加者の誰かが親(庄)になることができる点です。
 親を取るためには、最低でもHKD5000程度の資金が必要になりますが、他のプレイヤーに勝利できれば一気に資金が増えるチャンスでもあります。

 あと、勝敗判定のルールがより細かくなるのも、もう一つの特徴です。
 富貴三公では、同点で絵札の枚数が同じだった場合、数字のランクを比べ、より数位の高い札を使った方を勝ちとします。
 この場合 "K" が最高位となり、"A" は最弱です。
 仮にそれでも同じだった場合は、カードのスーツ(柄)で決着させます。


        三公百家樂のテーブル


《ファンタン:番攤》
 テーブル数:少ない
 最低投注額:中級カジノ・・・HKD100〜、高級カジノ・・・HKD200〜

 初めてマカオに訪れた人がこのゲームを発見して、妖しさを感じずには居られないはずです。
 カジノゲームなのにカードもサイコロも車輪も使わず、テーブルの上には「山積みになった白いボタン」と「お椀のような金属製カップ」、そして「細長い棒」が置かれているだけです・・・

 まず初めにディーラーは下向きにしたカップを白いボタンの山の上に被せ、カップと中に入ったボタンを所定の場所へ移します。
 そこからいよいよゲームが始まります。

 目的はカップの中に入っているボタンの数を当てることです!(ふざけた話ですが本当です)
 もちろん個数を完全に当てるのはさすがに無理なので、棒で4個ずつ取り除いた時の最終的な余りを予想します。

 その結果、1〜4のいずれかが当選(ちょうど割り切れる時は最後の4個を残して余りとする)となる訳です。

 当て方には幾つかのバリエーションがあり、「番:ファン」という一つの数字をダイレクトに当てるものから、「角:コック」という2種類の数字を押さえられるもの、「念:ニム」といった本命以外に一種類だけ保険で引き分けになる数字を選べるものなどがあります。

 マカオでは伝統のあるゲームなので、年配者を中心に楽しまれているようです。
 また他ゲームに比べて進行が遅く、カジノの中では一種の清涼剤となっているようです。

 あとプレイヤーの中には(大抵はジジイ)、カップを開いてディーラーがカウントを始めた途端、「セイ(四)!」とか言ってガッツポーズをする「ファンタンプロ」が存在します。
 どないしたら、あんな大量のボタンの余りが一瞬で見分けられるんだか・・・
 まぁ、開封後のカウントが早くても勝負には影響ないですけど、これはこれで凄まじい光景だったりします。


          ファンタンのイメージ


《パイガオ:牌九》
 テーブル数:少ない
 最低投注額:中級カジノ・・・HKD100〜、高級カジノ・・・HKD200〜

 ファンタンと同じく妖しさを漂わせるものの、それとは比べ物にならない気迫と熱気がテーブルを包み込む、バカラと並ぶマカオ最強のゲームです。
 中国式の黒色ドミノ(天九牌:ティンガオパイ)を用いて、その目の合計で優劣を競います。

 天九牌は全部で32枚で構成され、各牌にはサイコロ2つ分の目が彫られています。
 牌九のゲームでは各人に4枚の牌が配られ、それらを2枚+2枚の組み合わせに分けて、それぞれ親と勝負させます。
 重要なのは、両方の組み合わせで親を上回らないと勝利にならないことです。その反面、双方が負けない限り勝負は引き分けで生き残ります。

 牌2枚の組み合わせは「同じ牌のペア(宝)」を最強とし、次に「王(ウォン)、槓(ゴン)」と呼ばれる特殊役があります。
 これらに属さない場合は、目の合計下一桁が "9" に近いほうが勝ちです。

 牌九の最も戦略的なのは「牌の組み分け」であり、配当を得るために両方とも平均的な強さにするのか、一方を極力強くして損失を防ぐのか、牌の強さや現在の賭け金、また自分の運気を計って瞬時に決定しなければなりません。


          アンティークの天九牌

 また、牌九はディーラーの牌捌きを見られるのも楽しみの一つです。
 手際よく攪拌された牌を素早く積み重ね、親(庄)の権利を取ったプレイヤーの指示に従って、所定のフォーメーションで牌を配ります。
 その種類も「一棟棟(ヤットドンドン)」「切耳(チーイー)」「龍頭鳳尾(ロンタオフンメイ)」など、バリエーション豊富です。

 加えて、現地プレイヤーの手馴れた牌の見方も美しく、手のひらで隠しながら「カチャカチャ」と軽快な音を立てて、素早く2組に仕分ける姿は、牌九の聖地ともいえるマカオでしか拝むことはできないと思いました。

 そして、親となったプレイヤーが最後に気合を入れて自分の牌をめくります。
 時には叩きつけたり、ある時は思いっきり盲牌(牌底に指を当てて、彫りの場所で数字を確認する行為)して結果をじらしたりと、最後まで緊迫感は抜けません(親は他全員の賭けを引き受けているので、気合いが入らない訳がないですからね)。

 ようやく親が2組のセットを完了させ、ディーラーによって勝敗判定と配当が行われます。
 またこのスピードが早いこと早いこと・・・
 開いた瞬間に勝ち負けが全て分かっているためか、私達素人が再確認できる時間すらありません。
 ここはディーラーに任せて、しばし一勝負が終わったあとの余韻に浸ってもよいでしょう。

 今回はマカオのカジノの中で最も牌九が賑わっている「リスボア」へ繰り出しました。
 最初にゲームを始めた時は、オヤジ達の「コイツ牌九分かってるのか?」的な視線を受け、牌の見方や置き方などを幾度となく注意されました。
 しかし、30分ほどすればいつの間にか自分も場に溶け込んでおり、牌九プレイヤーの端くれとして認められたような気分に充実感を得ることができました。


 ということで、最後まで長文になってしまいましたが、今回の日記でマカオカジノのゲームの多様性と各種目ならではの楽しさを少しでも感じ取ってもらえれば幸いです。

[完]


     マカオのシンボル的カジノ、リスボア

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