映画"ラスベガスをぶっつぶせ"特集



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2008年5月31日(土)より日本で公開された映画、「ラスベガスをぶっつぶせ」(原題:21)は、
米国では一足早く、3月末より上映されており、公開直後の興行収入が1位になるなど、話題を集めています。

実は今回、この映画の日本公開にあたり、
当方より「字幕の文面」と、「吹替版の台本」のチェック業務を協力させていただきました。

映画自体は「華やかなラスベガス」や「一学生の栄光と転落」という部分をメインとしているため、
カジノに詳しくなくても十分に映画を楽しめることは間違いありませんが、
ここでは私らしく、若干カジノに視点を置いた解説にしてみたいと思います。


 ストーリー
 MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生であるベン(主人公)は、名門校「ハーバード大学」への進学を希望するが、30万ドル(約3,000万円)という超高額な学費を捻出できずに悩んでいた・・・

 その折、MIT教授のローザが、ベンの天才的な数学能力に目を付け、カジノゲーム「ブラックジャック」の必勝法、カード・カウンティングを覚えさせ、仲間とともにラスベガスへ乗り込む。

 一晩でカジノから大金を得るも、あくまでも「学費のため」と割り切るベンだったが、再三再四、週末にラスベガスへ行っては大勝ちすること体験していくうちに、次第に自惚れが芽生え、今までの友人に対して冷たくなり、嘘もついてしまう。

 もちろん、この毎回の大勝ちをカジノ側が黙って見ている訳もなく、ベン達は次第にマークされ、招かれざる客としての扱いを受けるようになる。

 そしてとうとう、どん底を味わうことになるが、そこからの逆転劇はあるのか・・・?



 カード・カウンティング
 「カード・カウンティング」とは、主にトランプゲームにおいて、ゲームに使用されたカードの種類を記憶しておき、次のゲーム以降に出現しやすいカードの推測を立てるという攻略法です。

 ブラックジャックにおけるカウンティングは、映画にもある「ハイ・ロー」カウントが最も一般的です。

 ブラックジャックのゲームはその特性から、”絵札(全て10点と数える)” と ”10の札” は顧客に有利な札とされ、逆に ”3・4・5・6” の札はカジノ側に有利な札となります。

 そこで、ゲーム中に使われたカードを目で追い、顧客自身に有利な ”10点札” がテーブルに出現したら、有利な札の残数が減るため「マイナス1」と数え、逆に ”3〜6” の札が出現したら、顧客に不利なカードが消化され、今後有利になるという考えで「プラス1」と数えます。

 その「プラス&マイナスの値」を常に掌握しておき、「プラス」の値が多ければ、たくさんの賭け金で勝負し、逆ならば勝負を控えるようにするのです。

 この方法は理論的にも認められており、正確かつ長期的に行っていれば、必ずカジノに勝つことができます。

 その上、主人公達はチームを組んでカウンティングを行っており、一番有利(プラスの多い)なテーブルだけに、金持ちプレイヤー(仲間が変装している)を招くという手の込みようです。

 また、カウンティングはメモや機器などを用いない範囲では違法性がないのですが、カジノ側はこの行為を「準不正」とみなしており、怪しい顧客の賭け方や勝ち金、その他の振る舞いを執拗にチェックし、テーブルから追い出そうとしています。

 結局、カウンティング自体は至極単純なものですが、実際にカジノで行うとなると、目まぐるしいスピードで配られるカードを正確に計算することに加え、カジノ側から目を付けられないように、行動をカモフラージュするのが最も大変だと言われています。


 マニアな視点から・・・
 字幕や吹替台本のチェックを行った際、実際に映画を拝見しましたので、そこで気がついた部分を挙げてみたいと思います。

 1.主人公達が最初に乗り込んだカジノは、「ハード・ロック」ホテルだったが、ゲーム中のテーブルは「レッド・ロック」という郊外の別カジノのものだった。

 2.ゲームで配られるているカードの角をよく見ると、角が丸くカットされており、カジノでは使い終わり、一旦処分されたものが用いている。

 3.ゲームで用いられているチップはセキュリティの関係上、カジノで実際に使われているものは採用できず、海外で一般小売しているものであるが、質感など本格的なタイプであった。

 4.主人公がカジノの職員に捕まり、別室で拷問を受けることになるが、実際にはカジノ側が一方的に顧客に手を下すと、後々裁判沙汰になった場合に不利になるため、カウンティングを止めるように、プレッシャーを与えるまでに留められている。


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