チップの部屋



私がカジノに興味を持ったとき、一番初めに目についたのが「チップ」です。
それまで家庭用の安っぽいポーカーチップしか触ったことのない自分にとって、
重量感のあるチップは憧れの対象になっていました。

それから約一年後、町の玩具店を探し回り、
やっとお目当てのチップを購入することができました。
何でももう生産していないらしく、在庫で残っていたものを買い占める形になったのですが、
チップ1枚あたりの単価がなんと200円。
まだその頃は学生だったので、大きな出費となりましたが、
そのチップは今でも大切に持っています。

私はこのくらいのチップマニアなのですから
ラスベガスなどのカジノを訪れた時は必ずチップを持ち帰ってコレクションにしています。

ということで、このコーナーではラスベガスで集めてきたチップを
現地のホテル事情の話をおりまぜながら紹介していきたいと思います。




チップの役割
 いまさら、この場で説明するほどでもありませんが、「チップ」とはカジノでゲームを遊ぶ際に、お金の代わりとして勝ち負けによってやり取りされる「コマ」のことです。
材質はプラスティックやクレイ(粘土)等でできていて、若干の重みがあるのが普通です。
サイズは最も多いのが直径39mmのもので、ヨーロッパでは金額によってチップの大きさが若干変わるところもあります。
ちなみにスロットマシンに投入するコインはチップとは言わず、「トークン」と呼びます。
ラスベガスでは「$5=赤」「$25=緑」「$100=黒」「$500=紫」などと金額によって配色が決まっています。($1はカジノによってまちまち)

 カジノでチップを採用している理由は以下の通りです。
  ・現金よりも盗難などの防犯率が高い。
  ・紙幣や硬貨の現金では配当や回収がしずらい。
  ・プレイヤーの金銭感覚をマヒさせる。

 特に3番目の「金銭感覚のマヒ」には十分注意しましょう。
$500のチップも$5のチップも大きさは全く同じで、色が違うだけです。
(いちおう$500のほうがデザインが少し綺麗だったりしますが・・・)
 ルーレットの赤黒に「5万円の現金」か「$500のチップ1枚」かける姿を想像してみてください。チップに$500とだけプリントしているものがいかに安っぽく感じるかお分かりいただけると思います。



 ラスベガスのカジノチップ−1

左上から「マンダレイ・ベイ」「サーカス・サーカス」「ラクソー」「エクスカリバー」

 まず初めに紹介するのはこの4枚です。
この4つのカジノホテルにはある共通点があります。
それは何かというと、実は「経営母体が同じ」なのです。
ラスベガスでは同じ会社が複数のカジノホテルを経営することは珍しくなく、この4つのホテルは全て「マンダレイ・リゾート・グループ」が所有するカジノホテルとなるわけです。(旧社名はサーカス・サーカス・リゾート)
もちろん全てのホテルが個性ある特徴を持っているから成り立っているのであり、特徴の薄いホテルは移り変わりの激しいラスベガスでは淘汰されてしまいます。

南国の楽園をイメージにした「マンダレイ・ベイ」、ピラミッド型のホテルの「ラクソー」、中世のお城をモチーフにした「エクスカリバー」、無料サーカスショーで有名な「サーカス・サーカス」と全てテーマが違います。

マンダレイ社の経営するホテルは全体的に安価なのですが、この中でもマンダレイ、ラクソー、エクスカリバー、サーカスの順にランク付けがなされています。
家族連れならホテルのランクよりも賑やかな所を選ぶ傾向があるし、年配の人やカップルで宿泊したいのならちょっと豪華にいきたい、という客のニーズに合わせていった結果このようになっていったわけです。



 ラスベガスのカジノチップ−2

左上から「ミラージュ」「トレジャー・アイランド」「ベラージオ」「ゴールデン・ナゲット」

 この4枚のチップもやはり同じ会社が運営しているものです。
しかし、その「ミラージュ・リゾート社」は現在これらのホテルは所有していません。
この次に紹介する「MGM社」に買収され、「MGM ミラージュ社」として運営されています。
旧ミラージュ社は1989年に「ミラージュ」ホテルを開業し、90年代にホテル建設ラッシュが始まる先駆けとなりました。
また、当時のオーナーである「スティーブ・ウィン氏」はラスベガスでは知らない人はいないというくらい有名な人物で、コンセプトを持ったカジノホテルを次々と建て、現在のリゾートタイプのラスベガスを作った人として不動の座を得ることになりました。
 ところが10年後の今、経営が思うように進まず、ウィン氏のワンマン経営もあいまって、MGM社の買収で社長の座を抜け出す形となってしまいました。
それでも実はウィン氏、まだまだ新しいホテルを生み出そうと動いています。この話はまた後ほど・・・



 ラスベガスのカジノチップ−3

左上から「ニューヨーク・ニューヨーク」「MGMグランド」「ボードウォーク」

 前項で紹介してしまいましたが、こちらは「MGMグランド」ホテルを筆頭に経営を行なっている、「MGM ミラージュ社」のカジノチップです。
MGM社はもともと映画会社で、日本のカジノ業界にも似たような名前の会社がありますが、こことは全くつながりはありません。
現在ミラージュ社を買収したため、ラスベガスでは最大の経営母体となっています。
ピエロのチップが目を引く「ボードウォーク」ホテルも元々はホリデイインの所有だったのですが、こちらも買収によりMGM傘下になっています。

 あと余談ですが、「ニューヨーク・ニューヨーク」ホテルの周りを走っているローラーコースター(いわゆるジェットコースター)の設計者は日本人なんだそうですよ。



 ラスベガスのカジノチップ−4

左上から「パリス」「バリーズ」「シーザーズ・パレス」

 これらのチップたちの親元は「パークプレイス・エンターティメント社」という所です。この他にもヒルトン系のホテル「フラミンゴ・ヒルトン」「ラスベガス・ヒルトン」も現在はパークプレイス社に買収されているので、MGMに競合する大きな会社であることになります。
つまり「フラミンゴ・ヒルトン」というホテルの呼称は現在は間違っており、「フラミンゴ」ホテルと言うべきでしょう。
ちなみに、パリスとバリーズはホテル内でカジノチップやスロットトークンを一部混同しています。

 この3つのホテルはどれもグレードが高く、特に「シーザーズ・パレス」は高級で敷居が高く、著名人もよく訪れる有名なホテルです。
映画「レインマン」でカジノのシーンもこのホテルで撮影されました。
カジノはちょっと暗くてあまりイメージが良くないせいか、前回訪れた時は改装工事をしていました。



 ラスベガスのカジノチップ−5

左上から「ホースシュー」「フォークイーンズ」「プラザ」「フリーモント」

 ここで紹介する4枚のチップは全てダウンタウンに建てられたカジノで、経営は全て別々です。
 「ホースシュー」はポーカーのワールドシリーズや上限なしの賭けを受け付けたりする、漢気(おとこぎ)のあるカジノとして有名です。
 「フォークイーンズ」はオーナーに4人の娘がいたことから名づけられたそうです。
 「プラザ」はダウンタウンのメインストリートである「フリーモント通り」の突き当りに位置し、元々1階は列車の駅だったところです。しかし現在は駅としての機能は果たしてはいません。
 「フリーモント」は通りの名前を店の名前にした分かりやすいカジノですね。
 ダウンタウンのカジノにはこれと言ったテーマ性はありませんが、昔のラスベガスの雰囲気を感じたい人にはぜひ行ってもらいたい所です。
 地元のプレイヤーにまみれて、安いレートでカジノをたしなむには最適です。



 ラスベガスのカジノチップ−6

左上から「モンテカルロ」「ベネチアン」「ストラトスフィア」「デザート・イン」

 これらのカジノにはそれぞれちょっと特殊なところがあります。
まず「モンテカルロ」からですが、このホテルは「マンダレイ社」と「ミラージュ社」(現MGMミラージュ社)の双方が資金を出して建設されたというかなり珍しいホテルです。
とはいってもカジノは比較的エレガントで清潔感があり、グレードとしては決して悪くないホテルです。
一説では現在はマンダレイ社が実際の経営を行なっているとも言われています。

 次に「ベネチアン」ですが、このホテルは世界一の6000室を持つホテルにしようと建設されたのですが、資金繰りがうまくいかず、とりあえず半分の3000室ができた所でオープンしたという説があります。
噂では現在、残りの3000室の建設がまた始まったそうです。

 「ストラトスフィア」
 「成層圏」という意味を持ち、ラスベガス一高いタワーのあるホテル。
前身のカジノである「ベガス・ワールド」が倒産してしまったため、新たにカジノホテルを再建したものです。
 オープン当初はタワーの物珍しさもあいまって、そこそこの収益を得ることができたのですが、ホテルの位置がストリップとダウンタウンのちょうど中間に位置し、交通のアクセスが極端に悪いため、なかなか客を寄せ付けることができずまた倒産してしまったという、悲運のカジノです。
 現在はロケーション以外の様々な施設を増設することで落ち着いた経営となっています。


 最後に「デザート・イン」ですが、今から50年前に建てられ、規模は小さいながらも優雅で落ち着いたホテルで有名したが、近年のテーマパーク型カジノホテルの波に押され、去年50年を節目に営業を終わらせました。
 ところがなんと、ミラージュ社の社長を追い出された「スティーブ・ウィン氏」がこのホテルを買い取り、新しいホテルの建設に着手すると意気込んでいるのです。
 まだ詳しい詳細は分かっていませんが、「ミラージュ」ホテルによって、新しいラスベガスの形を作った人物ですから、このホテルの動向には目が離せません。



 チップコレクターへの道

専用のフレームに納められたカジノチップたち

 さてさて、チップに見る様々なカジノホテルの事情にふれながら、話をすすめてまいりましたが、いかがでしたか?
カジノといっても作れば必ず儲かるわけではないのですね。客のニーズや立地条件、目には見えない様々な運も関わっているのでしょう。

 最後にチップのコレクションのコツをお教えしますので、興味のある方はぜひ集めてみてください。お土産としても結構オシャレかもしれませんよ。

チップコレクションの心得
 ・テーブルゲームをしている時はあらかじめポケットにしまっておく
 ・キャッシャーで交換する時は「スーベニア」(土産)と言うと伝わりやすい
 ・チップは使いすぎで汚い(カビや色あせ)のもあるので注意
 ・まれに何がしかのイベント時の記念チップが入っていることもある
 ・カジノによっては$1のチップがない所もある(トークンしかない)
  ただし、クラップテーブルはトークンを使わないのでここにチップはある
 ・集めるなら頑張って最低でも20枚くらいは集めよう


 ちなみに、写真にあるチップ専用フレームは約$65と結構いい値段ですが、コレクションが引き締まります。